◇ 事業の目的と領域
事業を始める(起業)にあたっては、事業目的と事業領域をはっきりさせておかなければなりません。法人を設立する際にはどんな業種を事業としていくのか、会社の定款に記載する必要があります。この定款に載っていない事業はできないのです。
◇ 営業許可など
事業を開始するには、日本の国家資格や公的な免許の取得が必要なもの、役所の許可・認可・届出が必要な場合があります。
許可などを申請する役所(申請機関)は、業種により異なります。
* 許可、届出などが必要な職種と申請機関の表
職 種 |
申請機関 |
旅館業菓子製造業喫茶店営業理容・美容業医薬品販売業クリーニング業ペットショップ |
保健所 |
古物商風俗営業酒類販売金属くず業警備業 |
警察署 |
運送業(陸運支局)自動車整備業(陸運支局) |
陸運支局 |
建設業(県土木建築事務所等) |
県(県民局建設部) |
旅行業(県運輸局)通訳案内業 |
県(観光物産課)または国土交通省 |
各種学校(県学事課等) |
県(総務学事課) |
労働者派遣事業(公共職業安定所) |
労働局 |
なお、外国籍の方は国家資格などを取得しても営業が制限され許可されない業種がありますので、注意してください。
例えば、医療分野の鍼灸・マッサージ、介護福祉士などです。
◇ 個人で開業? 法人で開業?
事業を行う場合、個人または会社(法人)の二つの形態があります。
◆ 個人事業の場合:
個人事業の場合は、法務局への登記は必要ありません。ただし、営業許可などが必要な職種の場合には、事業開始前に手続しておきます。
◆ 法人(会社)を設立する場合:
会社の設立には登記が必要です。登記は法務局へ申請しますが、手続きは簡単ではないので、手続代行の専門家である司法書士に相談するのが一般的です。
会社設立の前に決めておくこと:
・会社の種類をどうするのか?
会社の種類には、合名会社、合資会社、合同会社、株式会社がありますが、株式会社が一般的です。
・資本金をいくらにするのか?
従来は、株式会社を設立するには最低資本金として1,000万円以上が必要でしたが、法の改正により1円からでも設立可能となりました。
・組織をどうするのか?
取締役を何人以上とするか、取締役会を設置するのか、監査役、会計参与を置くのか置かないのか等です。
* 個人営業と法人(会社)組織の比較
項目 |
会社組織 |
個人営業 |
設立時 |
登録免許税や手数料がかかる |
経費は不要 |
信用面 |
金融機関・支援者からの資金調達がしやすい。対外的な信用が得られる。 |
金融機関・支援者からの資金調達が難しい。 |
経理面 |
帳簿は複式簿記で記帳しなければならないため、経理事務員の雇用や税理士への依頼が必要となる。 |
簡易帳簿で処理できるため、経理事務員や税理士の助けを借りる必要があまりない。 |
税金面 |
法人税の適用を受ける |
所得税の適用を受ける |
税率が定率(高い所得金額では、個人営業よりも有利) |
税率が累進課税方式(低い所得金額では、会社組織よりも有利) |
家族を従業員や役員として報酬・給与を経費とできる |
家族従業員への給与支払いに制限がある |
交際費の全額は損金算入できない。 |
交際費の全額が経費として認められる。ただし、事務所家賃・水道光熱費などとともに合理的な按分計算が必要。 |
会社の設立手続について相談する
岡山地方法務局
岡山県司法書士会
◇ 税金と社会保険
◆ 税金:
所得税等:個人事業者は毎年1月1日から12月末までの決算をして所得税の確定申告をします。確定申告書の提出期限は2月16日から3月15日です。このほかに個人事業税などの地方税がかかります。
法人税等:株式会社など法人には法人税・法人県市町村民税・法人事業税の納付義務があります。決算期(会社によって異なります)の2か月後までに確定申告をして納税します。赤字の場合でも均等割りの法人県市町村民税が課税されます。
消費税:前々年の売上げが1,000万円を超える事業者は消費税を納税しなければなりません。消費税は預かり金ですので、自己の資金とは区別しておきます。なお、商品の価格表示は、消費税込みの額(総額表示)とします。
◆
税金の申告・納税、会社会計に関することは、税理士に相談するのが一般的です。
税金の申告と納税について相談する
岡山東税務署
岡山県備前県民局税務部
中国税理士会
◆ 社会保険:
従業員を採用する場合は、事業主が労働保険(労災保険と雇用保険)に加入しなければなりません。
労災保険:短期のアルバイトも含めた正職員、契約社員、パート社員にも適用されます。保険料は全額事業主が負担します。
雇用保険:雇用保険は契約社員、パート社員を含めた週20時間以上の労働時間の社員に適用されます。雇用保険の加入者は離職時に給付が受けられます。そのため一般的には「失業保険」と呼ばれています。給付を受ける条件は、(1)離職日前の1年間に合計6ヶ月以上勤務し、(2)再就職の意思がありながら就職できないことです。
※ 外国人が「投資・経営」の在留資格の許可を得るためには、雇用保険に加入している正社員が2名以上いることが必要です。(500万円以上の投資額が継続して維持されれば、この限りにありません。)
◆ 健康保険と年金:
法人の場合
社員、役員とも健康保険、厚生年金保険に加入できます。
個人事業の場合
社員が5名以上いれば、社員は健康保険、厚生年金保険に加入できます。 事業者は国民健康保険、国民年金に加入します。
※ 年金の外国人脱退一時金
国民年金の保険料を納めた期間又は厚生年金保険に加入した期間が6か月以上ある外国籍の方は、出国後2年以内に請求を行うことで加入期間等に応じて計算された一時金が支給される「外国人脱退一時金制度」があります。
外国人脱退一時金
(参考)脱退一時金に関するQ&A
・ 国民年金に加入した外国人が帰国することになりました。このような場合、何か保障がありますか。
・ 厚生年金保険に加入していた外国人が帰国することになりました。このような場合、何か保障はありますか?
◇ 起業と経営の相談窓口
起業相談や経営相談ができる機関はたくさんあります。地元の商工会議所・商工会や国・地方自治体(県市町村役場)関係の機関のほか、創業塾を開催したり、起業支援施設を提供している団体もあります。
*相談窓口及び経営支援機関については1-3-4のリンク先をご覧ください。